『はじめて学ぶ考古学』を紹介しました

石井淳平
Jan 22, 2022

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2022年1月20日に開催された、北海道博物館協会学芸職員部会オンライン研修会「学芸員の本棚からオススメの一冊」で『はじめて学ぶ考古学』(有斐閣アルマ,2011)を紹介しました。

本書の特徴

数ある考古学の概説書の中でも「攻めた」内容となっていることが特徴です。

こうした概説書のターゲット層として、一般の読者も含めたいわゆる「初学者」向けのものと、考古学を専門に学ぶ者が座右に置いて参考にするものとがありますが、本書はどちらかといえば後者に属するものです。

しかしながら、記述そのものは極めて平易で、考古学の基礎知識がなくても理解できる記述になっています。考古学とは何をどのように研究する学問なのか、ということを理解するために、ぜひ、他分野の学芸員の方や、考古学という学問について知りたい方には読んでいただきたいと思います。

オススメの一章

本書の中で1章だけ限定しておすすめすると、北海道大学の小杉康先生が執筆された第4章「空間を読む」をぜひ読んでいただきたいと思います。

小杉先生は、考古学における空間論の奥深さを非常に丁寧に解説されています。章の前半では考古学を学んだ方には馴染み深いゴードン・チャイルドの『Piecing together the past』(日本語版は近藤義郎訳『考古学の方法』河出書房)における分布論の考え方を非常に簡潔に解説しています。この一章を読むだけで、考古学の基本の3分の1ぐらいが学べるといえるほどです。

さらに、小杉先生は空間統計を巧みに使いこなす考古学者として知られていますが、ご自身の研究成果である超越的地域論もわかりやすい図とともに解説されています。考古学における分布論の魅力を感じていただくためには、この第4章から読んでいただくことをお薦めします。

まとめ

もし、考古学という学問の全体像を手軽に掴んでみたい、考古学の入り口に立ってその奥深い世界を覗いてみたい、というニーズが有りましたら、ぜひ、この本を手にとってみてください。簡潔な章立てによって、自分がどこを読むべきか、すぐに教えてくれるはずです。

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石井淳平

文化財保護、博物館について地方自治体職員の立場から意見を述べます。富山大学人文学部卒業(考古学専攻)、北海道埋蔵文化財センター、厚沢部町教育委員会、厚沢部町役場