2022年1月28日開催の日博協主催緊急フォーラムに参加し、質問の機会を与えていただきましたので、ここで共有します。
質問(石井):「文化芸術の価値や生物環境の保全に対して国・地方公共団体や産業界、個人等が支援・投資し、さらなる人材・資金・施設等の経営基盤が充実されていくという、博物館の価値を高めるための好循環が形成されることが重要」(答申,pp.17–18)とされていますが、博物館の外部にあるなんらかの経済的利益の欲求に博物館活動を寄り添わせることが推奨されるべきかのように読めてしまいます。博物館がその役割を果たすために必要な経費を社会が捻出することと、投資を受ける対象となることは同一ではないと思うのですが、この点について、WG等ではどのような議論があったのでしょうか。
また、第2章「ふさわしい博物館」で言及された「支援・投資」にかかる視点が、第3章ではその方向性が言及されていないように見えることも気になります。この文言が今後の法改正や省令、予算事業等にどのように反映されていくのでしょうか。
回答(文化庁):博物館の外部の経済的利益をめざす博物館を強調するわけではない。文化審議会ではそのような議論ではなく、「支援・投資」は広義の支援の意味で使用している。教育活動に熱心に取り組む博物館が自治体からの大きな支援を受けられる。文化観光の推進において目覚ましい成果を挙げているルーブルや大英博物館のような支援の受け方がある。それぞれのミッションにより支援を獲得する。より充実した支援の好循環を作り出すことがここでいう「支援・投資」の意味。
第3章との関係では、登録基準を定型的な要件から活動内容も基準に加えていくこととしている。活動の充実の結果として、博物館の重要性や価値が支援層により理解されることの重要性を指摘したもの。
唐突感が否めない
改めて文字起こしをするとちょっと不自然というか、「支援・投資」にかかる部分の唐突感が否めません。とはいえ、こうした文化振興施策を経済活性化、すなわち「投資」対象として結びつける発想は、すでに「未来投資戦略2017」などで既定路線である以上、むしろこうした発想が全面に出てこないほうが不思議なくらいです。
「文化芸術基本法とその周辺は要注意」で宇仁さんが「常に前向きなK3省とか官邸は辛気くさい法律などお構いなしに実益を求める。博物館も法的位置付けなど意識せず実態に即した扱いがされていくと予想する。登録相当類似の区分けに関係しない競争が始まるのかも知れない。」と述べているように、法改正とは無関係に予算事業で博物館に対する方向性が規定される未来を見据えているのかもしれません。今回の答申で一瞬「投資」に触れた後、姿が見えなくなるのは博物館関係者が求めるような、博物館法の趣旨と連動した予算事業など創設される予定がないからなのかもしれません。
浦幌の持田さんが怒りを込めているように、博物館法改正で現状を変える意図はもはやない、ということなのでしょうか?