基礎数の算出
全国の埋蔵文化財担当者数は5,488人です。これに基づいて、以下のように1年あたりの退職者数を算出します。
- 1年あたりの定年退職者数:5,488人 ÷ 35年 = 156人
- 1年あたりの定年退職以外の退職者数:2.49% × 5,488人 = 136人
これらを合計すると、1年あたりの退職者数は292人となります。
基礎数の根拠
- 全国の埋蔵文化財担当者数:埋蔵文化財関係統計資料(令和5年度)
- 定年退職者数:令和4年度地方公務員の退職状況等調査
- 1年あたりの定年退職以外の退職率:上記資料から定年退職以外の退職者数(69,841人)を算出し、これを総務省公表の令和5年地方公共団体職員数(2,801,596人)で除して算出
必要求人数
埋蔵文化財担当者の募集において、応募倍率は3~5倍が適切と考えられます。埋蔵文化財担当者の募集は通常若干名で行われるため、応募倍率が高くても採用コストがそれに比例して増加するわけではありません。このことから、埋蔵文化財担当者募集に必要な応募人数の延べ数は292人 × 5倍 = 1,460人となります。
また、1人あたりの平均受験数を3回と仮定すると、1,460人 ÷ 3回 = 486人のユニークな求職者がいれば、健全な人材供給がなされていると判断できます。
考古学を専攻する大学生
日本考古学協会が公開している情報によると、考古学を学べる大学は全国で171校あります。このうち、ゼミや専攻コースを持つ大学の数を50%と仮定すると、85校となります。さらに、ゼミや専攻コースの所属人数の平均を10人と仮定すると、85校 × 10人 = 850人が、毎年日本で卒業する考古学専攻生の数と考えられます。
考古学専攻生の埋蔵文化財就職率
母数となる850人に対して、埋蔵文化財関連の職に就きたいと考える学生がどのくらいになるのかは推測になりますが、大学の先生に聞いたところによると、院進学を含めても20%に満たないと感じられるそうです。したがって、850人 × 0.2 = 170人が、埋蔵文化財関連職への就職希望者と推定されます。
結論
170人 ÷ 292人(年間の退職者数) = 58.2%が、埋蔵文化財関連職へのリアルな応募倍率となります。職場や地域によって応募の偏りが生じるため、地方での採用は非常に厳しい状況であると言わざるを得ません。また、170人の中には、埋蔵文化財担当業務を遂行する能力が十分でない者(発掘経験や遺物実測経験がない者など)も含まれるため、ミスマッチが発生するリスクも高くなります。
前述のように、健全な人材供給のためには486人の求職者が必要であると考えられるため、この現状は非常に厳しいものと言わざるを得ません。